2010年2月20日土曜日

残業代請求(サービス残業問題)の基礎:名ばかり管理職問題

このブログでは、顧問弁護士(法律顧問ともいいます)としてよく聞かれるテーマをメモしていきます。

今回は、名ばかり管理職を考えてみます。


法定の労働時間は、「1日8時間、1週40時間」が大原則です。

ただし、管理監督者にはこの原則が適用されません。なぜなら、管理監督者は、労働管理において経営者と一体的立場にあるため、労働時間を規制することになじまないからです。


では、この管理監督者とは何なのでしょうか?


管理監督者を理解するうえでの重要なポイントは、使用者の裁量で登用できるいわゆる管理職と、労働時間規制の適用除外となる管理監督者の範囲は異なる、ということです。


言い方をかえると、管理者の範囲は使用者が任意に決めることができますが、管理監督者の範囲は使用者が任意に決めることはできず、法律で認められた範囲に限定されるのです。


そして、管理監督者の範囲については、


①労務管理について経営者と一体的な立場にある者であり、名称にとらわれず、実態に即して判断されること

②管理職手当や役職手当など賃金の待遇面で一般労働者に比べて優遇措置がとられていること


という基準を示で決められます。


「名称にとらわれず」という点が重要です。課長、部長の肩書きがあっても、実態として、責任や権限がない、地位にふさわしい基本給や手当てが支給されていないなどの事情を考慮して、当該事案においては管理監督者ではないと判断されることがあるのです。


これが、いわゆる、名ばかり管理職の問題です。


この点について、有名な日本マクドナルド事件では、裁判所は、


・外食産業の店長は、アルバイトを採用して一次人事考課には関与するものの、さらなる二次評価等には関与しないこと
・店長に独自のメニューを開発したり原材料の仕入先の選定権限はないこと、店舗の営業時間帯にマネージャーを置かなければならない関係上、労働時間の自由裁量がないこと
・処遇としてS評価の店長の場合は779万円余りの年収とはなるものの、店長の全体の40%にあたるB評価の店長の場合は、下位の職位者の年収との間に44万円の差がある一方、下位の職位者が平均的な時間外労働を行うと、下位の職位者の年収がB評価の店長のそれを上回ってしまう実態があること


などの事実を認定、評価して、この店長は労基法上の管理監督者にはあたらないと判断しました。


このように、管理監督者の範囲は厳格に判断されることになるため、残業代の不払いの問題になる可能性があります。残業代の不払いは、結局は企業にとって大きな支出になりますので、十分ご注意ください。


ご不明な点がありましたら、顧問弁護士にご相談ください。


また、労働者の方で、サービス残業、不払い未払いの残業代がある方は、一度弁護士に相談することをお勧めします。

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