2010年6月4日金曜日

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマ:会社分割と労働関係

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマをまとめています。

今回は、会社分割と労働関係についてです。

会社分割と労働関係について、東京高裁(日本アイビーエム事件。会社分割を行った際、設立する会社へ承継される営業に含まれるとして分割計画書に記載された労働契約の相手方労働者である控訴人らが、被控訴人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、会社分割手続の違法等が不法行為にあたるとして損害賠償を請求した事案)は以下のように判断しました。

会社分割においては、承継営業に主として従事する労働者等の労働契約を含め分割計画書に記載されたすべての権利義務が包括的に新設会社に承継される仕組みが取られており、会社分割制度においては、その制度目的から、会社分割により労働契約が承継される新設会社が分割会社より規模、資本力等において劣ることになるといった、会社分割により通常生じると想定される事態がもたらす可能性のある不利益は当該労働者において甘受すべきものとされているものと考えられること、分割手続に瑕疵がありこれが分割無効原因になるときは分割無効の訴えによらなければこれを主張できないとされており、個々の労働者に労働契約の承継の効果を争わせることは、この分割無効の訴えの制度の例外を認めるものであり、会社分割によって形成された法律関係の安定を阻害するものであることを考慮すれば、労働者が5条協議義務違反を主張して労働契約の承継の効果を争うことができるのは、このような会社分割による権利義務の承継関係の早期確定と安定の要請を考慮してもなお労働者の利益保護を優先させる必要があると考えられる場合に限定されるというべきである。この見地に立ってみれば、会社分割による労働契約の承継に異議のある労働者は、分割会社が、5条協議を全く行わなかった場合若しくは実質的にこれと同視し得る場合、または、5条協議の態様、内容がこれを義務づけた上記規定の趣旨を没却するものであり、そのため、当該労働者が会社分割により通常生じると想定される事態がもたらす可能性のある不利益を超える著しい不利益を被ることとなる場合に限って、当該労働者に係る労働契約を承継対象として分割計画書に記載する要件が欠けていることを主張して、分割会社との関係で、労働契約の承継の効果を争うことができるものと解するのが相当であるというべきである

会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、御社の顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(未払い残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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