2009年12月26日土曜日

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:ねずみ講防止法

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日は、無限連鎖講の防止に関する法律についてです。

無限連鎖講の防止に関する法律は、一般には「ねずみ講防止法」と呼ばれています。すなわち、ねずみ講が引き起こす社会的な害悪を防止するための法律です。同法の条文は、以下のとおりです。

(目的)

第一条 この法律は、無限連鎖講が、終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るものであることにかんがみ、これに関与する行為を禁止するとともに、その防止に関する調査及び啓もう活動について規定を設けることにより、無限連鎖講がもたらす社会的な害悪を防止することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「無限連鎖講」とは、金品(財産権を表彰する証券又は証書を含む。以下この条において同じ。)を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、順次先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする金品の配当組織をいう。

(無限連鎖講の禁止)

第三条 何人も、無限連鎖講を開設し、若しくは運営し、無限連鎖講に加入し、若しくは加入することを勧誘し、又はこれらの行為を助長する行為をしてはならない。

(国及び地方公共団体の任務)

第四条 国及び地方公共団体は、無限連鎖講の防止に関する調査及び啓もう活動を行うように努めなければならない。

(罰則)

第五条 無限連鎖講を開設し、又は運営した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第六条 業として無限連鎖講に加入することを勧誘した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第七条 無限連鎖講に加入することを勧誘した者は、二十万円以下の罰金に処する。

会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。



なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(未払いの残業代の請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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2009年11月29日日曜日

顧問弁護士(法律顧問)扱うテーマ:取締役の報酬の変更

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日のテーマは、取締役の報酬の変更についてです。

取締役の報酬は、定款や株主総会の決議により決められます。いったん取締役の報酬額が決まった場合、取締役の同意がなければ、一方的に変更することは原則としてできません。会社と取締役との間の契約として両当事者を拘束するからです。

では、取締役の任期中に職務内容が変更した場合でも報酬額を変更できないのでしょうか。最高裁はこの点について、変更はできない旨判断しました。以下は、その判決文の引用です。

株式会社において、定款又は株主総会の決議(株主総会において取締役報酬の総額を定め、取締役会において各取締役に対する配分を決議した場合を含む。)によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではないと解するのが相当である。この理は、取締役の職務内容に著しい変更があり、それを前提に右株主総会決議がされた場合であっても異ならない。
 これを本件についてみるのに、原審の適法に確定した事実関係によると、(一) 被上告会社は、倉庫業を営む株式会社であり、上告人は、昭和四五年一二月から昭和六〇年六月一四日に任期満了により退任するまで被上告会社の取締役であった、(二) 被上告会社においては、その定款に取締役の報酬は株主総会の決議をもって定める旨の規定があり、株主総会の決議によって取締役報酬総額の上限が定められ、取締役会において各取締役に期間を定めずに毎月定額の報酬を支払う旨の決議がされ、その決議に従って上告人に対し毎月末日限り定額の報酬が支払われており、その額は昭和五八年一二月現在五〇万円であった、(三) 被上告会社の株主総会は、昭和五九年七月一三日、上告人が常勤取締役から非常勤取締役に変更されたことを前提として上告人の報酬につきこれを無報酬とする旨を決議したが、上告人はこれに同意していなかった、というのであるから、株主総会において上告人の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議がされたことによって、上告人がその任期中の報酬の請求権を失うことはないというべきである。
 したがって、右株主総会決議によって、上告人は、その翌日である昭和五九年七月一四日以降の取締役報酬請求権を失ったとして、上告人の本訴請求のうち同日から上告人が取締役を退任した昭和六〇年六月一四日までの報酬及び各月分の報酬についての翌月一日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める部分を棄却すべきものとした原審の判断は、株式会社の取締役の報酬についての法令の解釈適用を誤ったものというべきであり、この違法が原判決の結論に影響することは明らかである。論旨は理由があり、原判決中の上告人の敗訴部分は破棄を免れない。そして、前記事実関係の下においては、上告人の本訴請求は理由があるので、右部分を棄却した第一審判決を取り消し、昭和五九年七月一四日から昭和六〇年六月一四日までの間の報酬合計五五二万三六五六円及びこれに対する各月分についての翌月一日以降支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める部分についても上告人の請求を認容すべきものである。

会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

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なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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2009年6月21日日曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

3 割増賃金(残業代)等の算定
(1)不支給の合意について
 前記1(2)エのとおり,原告と被告との間で,時間外手当(残業代)不支給の合意があったと認めることができる。
 しかし,不支給の合意があったとしても,労働基準法32条,37条の趣旨に照らすと,特段の事情のない限り,上記合意は,公序良俗に反し,無効というべきである。
 なお,被告は,原告の給与水準が高すぎると感じて,その減額を求め,時間外手当(残業代)を代わりに支給する案を提示したが,明確に拒絶されたと主張する。
 しかし,上記提案の際に,時間外手当(残業代)を支給するとの条件提示がされていたことを裏付ける証拠はなく,単に,給与の減額を提案したが,拒絶されたに過ぎないことが窺える。
(2)割増賃金(残業代)の算定の基礎となる賃金
 原告は,平成14年10月分から同年12月分までは,基本給月額24万円の支給を受けており,平成15年1月分からは基本給月額25万円の支給を受けていた。
 また,原告の所定労働時間は,1日7時間であり,土日のほか,祝祭日が所定休日となっていたことによると(前提となる事実(2)イ(ウ)),割増賃金(残業代)の算定の基礎となる1時間当たりの賃金は,少なくとも,原告の主張する金額を越えることは明らかであるので,割増賃金(残業代)の算定に当たっては,原告の主張する金額(平成14年12月までは1385円,平成15年1月以降は1443円)により算定することとする。
〔計算例〕
(円/月)(月/年)(週/年)(時間/週)(円/時間)
240,000 ×12 ÷52.14 ÷35 =1,578
(平成14年12月まで)
250,000 ×12 ÷52.14 ÷35 =1,643
(平成15年1月以降)
(3)割増賃金(残業代)の算定
ア 平成14年10月分(9月30日分を含む。)から同年12月分まで
 前記2(4)のとおり,平成14年10月分(9月30日分を含む。)から同年12月分までの原告の時間外労働(残業)等は,別紙2割増賃金(残業代)等算定表の各該当部分記載のとおり認めることができる(法定内時間外労働(残業):59時間,法定外時間外労働(残業):124時間,深夜労働:7時間)。
 前記(2)の1時間当たりの賃金を基礎として計算すると,上記期間の割増賃金(残業代)は,別紙2割増賃金(残業代)等算定表の小計欄記載のとおり,29万8815円となる。
イ 平成15年1月分から同年10月分まで
 前記2(4)のとおり,平成15年1月分から同年10月分までの原告の時間外労働(残業)等は,別紙2割増賃金(残業代)等算定表の各該当部分記載のとおり認めることができる(法定内時間外労働(残業):184.5時間,法定外時間外労働(残業):290時間,深夜労働:15時間)。
 前記(2)の1時間当たりの賃金を基礎として計算すると,上記期間の割増賃金(残業代)は、別紙2割増賃金(残業代)等算定表の小計欄記載のとおり,79万4734円となる。
(4)まとめ
 被告は,原告に対し,前記(3)の金員(合計109万3549円)及びこれに対する遅延損害金(弁済期の後である平成17年4月15日から支払済みまで年5%の割合による金員)を支払うべきである。 
4 付加金
 前記1(2)エのとおり,原告と被告は,時間外手当(残業代)不支給の合意を交わしていたことが認められるが,本来,このような合意は公序良俗に反し,効力がないものであり,むしろ,時間管理が適正に行われていなかったというべきである。
 もっとも,原告の給与,賞与等は,上記不支給の合意を考慮したうえ支給されていたことが窺える(〈証拠略〉,弁論の全趣旨)。
 これらの事情を総合すると,被告は,原告に対し,上記法定外時間外労働(残業)及び深夜労働に対する割増賃金(残業代)のうち,平成15年3月分から平成15年10月分までの41万4863円のうち,25万円に相当する付加金の支払を命じるのが相当と考える。
企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇敷金返還・原状回復義務借金の返済刑事事件遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年6月13日土曜日

サービス残業(残業代請求)

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

(キ)ワーキングフォームの記載と矛盾するメールの送信記録
a 平成14年4月24日における原告の退社時刻は,原告のワーキングフォーム上,21時10分(午後9時10分)と記載されているが(〈証拠略〉),同日午後9時12分,原告の自宅のパソコンから取引先にデータを送信しており(〈証拠略〉),上記ワーキングフォームの記載は誤りであると認めることができる。
b 平成15年10月16日における原告の退社時刻は,原告のワーキングフォーム上,25時21分(同月17日午前1時21分)と記載されているが(〈証拠略〉),同年10月17日午前1時4分,原告の自宅のパソコンからメールを送信しており(〈証拠略〉),上記ワーキングフォームの記載は誤りであると認めることができる。
(ク)以上によると,少なくとも前記(カ)a,b,e,(キ)a,bで検討したところによると,原告のワーキングフォーム(甲1の各号)の記載に他の証拠と矛盾する記載があり,ワーキングフォームの記載全体の信用性を減殺する事情といわなくてはならない。
エ 原告のワーキングフォーム(甲1の各号)の記載と符合する点
 乙山は,原告のワーキングフォームの記載中,平成14年12月24日,平成15年3月10日,同年3月31日については,原告の時間外労働(残業)があったことを述べる(〈証拠略〉)。
 上記ワーキングフォームにおいて,これらの日の記載を確認すると,いずれも,乙山が述べる残業の実態に符合する記載がされているといえる。
オ まとめ
 以上によると,原告のワーキングフォームの記載は,その作成経緯から考えても(前記イ),また,他の証拠との関係から見ても(前記ウ),その記載をそのまま採用することはできないが,全くのでたらめということはできず,一応,原告の記憶に基づき記載されているもので(原告本人),時間外労働(残業)の算定の資料とすることは可能といえる。
(2)原告の時間外労働(残業)を推認させるその他の事情
ア 原告の業務内容と残業の可能性について
(ア)被告は,被告の事業は理科系の知識を前提にするものであるが,原告の職務内容はその能力上,電話対応,コピー,簡単なパソコン作業程度の庶務に限定されるものであり,これらの業務を所定終業時刻(午後6時)以降行う必要はなかったと主張する。
 前記1(2)のとおり,被告は,原告が求人広告に応募する直前に,女性2名の採用を決めていた。うち1名は庶務として採用したが,隔日勤務であり,1日5時間程度という条件であったこと,その後の,原告の従事した業務内容を併せ考えると,原告の業務は,庶務のみではなく,庶務及び編集・製作の補助であったと認めることができる。
 したがって,必ず終業時刻には退社していたとは考えにくい。
(イ)平成15年10月における勤務状況
 被告は,平成15年10月に神戸で開催された学会のため,同年9月20日以降多忙を極めるようになったが,これらの業務は原告の業務とは関係がなく,原告が多忙となることはなかった旨主張する。
 しかし,このように被告の業務が多忙になれば,原告の業務が庶務的なものであったとしても,乙山や他の学生アルバイトの作業の補助をするため,必然的に多忙となることは推認され,原告が残業をすることがあっても不思議とはいえない。
(ウ)翻訳の外注について
 なお,被告自身,CCTの業務が終了した後,翻訳会社2社から作業代の請求があったことを認めており,原告が,発注したことが窺われる。仮に,乙山の承諾なく発注したものとしても,全く必要のない作業を外部に発注することは考えにくく,多忙のため,指揮命令系統の混乱から,業者に発注したということもあり得る。また,秘密性の高い情報を扱う場合は,被告の上記主張のとおりであったとしても,秘密性が低い情報については,多忙のあまり,外注することがあり,しかも,そのことを乙山が失念したという可能性も否定はできない。
(エ)被告の労働基準監督署に対する対応
 原告は,本件解雇後,平成15年12月8日,茨木労働基準監督署に労働基準法37条違反の申告を行い,労働基準監督官が,平成16年1月9日,臨検し,乙山から事情を聴取したところ,乙山は,「庶務であれば時給900円であるが,編集であれば,仕事も不規則なので,月額25万円の固定給とし,残業代は付けていない。成果はボーナスで評価することとし,申告人(原告)も合意の上入社した。申告人(原告)は編集といっても補助作業しかしておらず,専門業務型裁量労働制に該当するような仕事ではない。」と説明している。
 さらに「申告人(原告)がいなかった時間分も記録されているため,申告人(原告)の請求している根拠全体の信用性がないと考える。」と述べる一方で「申告人(原告)の請求に対し,たしかに時間外労働(残業)の実績はあったのだから,いくらかは支払うつもりはあるが,申告人の請求どおりに支払うことはできない。」とも述べている。
(〈証拠略〉)
 なお,乙山は,平成16年2月12日,労働基準監督官に対し,「事業主(被告)が命じた時間外労働(残業)に対する対価は約10万円であるが,その分を見込んで,多額の賞与を支払っていた。」と述べるに至っている(〈証拠略〉。なお,上記10万円に対応する期間は不明である。)。
イ 原告に対する退社指示
 被告は,乙山が,原告に対し,毎日厳しく,午後6時に退社するよう指示していたので,原告の主張する時間外労働(残業)はあり得ない旨主張する。
 これについて,乙山は,「(午後)6時を過ぎておられると大変に不機嫌でした,(午後)7時までには帰っていました。」と供述する(被告代表者本人)。しかし,一方で,前記(1)ウ(ウ)dのとおり,原告が遅くまで退社しなかったことが窺え,また,原告も,平成14年10月21日の知人宛のメールで,乙山が午後6時30分に帰社した後,原告に対し「何もしなくていいから帰れ」と言われたと述べている(〈証拠略〉)ことが認められる。
 そうすると,原告が常に早く退社しようとしていたという趣旨の乙山の上記供述は信用できない。
 なお,乙山からの退社指示があったにもかかわらず,その後,業務に従事したことをもって,割増賃金(残業代)を支払うべき時間外労働(残業)を認めることができるか否かについては,被告からの業務命令に基づく業務に従事していると認めることができる以上は,直ちに,時間外労働(残業)の存在を否定することはできないというべきである。
ウ 感情的対立
 なお,被告は,原告と乙山との間で,感情的な対立が頻繁に生じていたことを主張し,学生アルバイトであった者もこれに沿う供述をしている(〈証拠略〉)。
 しかし,これらの対立に端を発する言い争いの有無が,直ちに,原告の時間外労働(残業)の認定に影響を及ぼすとは考えられない。
(3)休憩時間について
 被告は,平成14年6月,原告の勤務時間を午前10時から午後7時までとし,昼食休憩時間を2時間とする旨改めて,本人に告げたと主張する。
 しかし,これを裏付ける証拠はなく,仮に,原告が,午後,うとうとすることがあり,上述した告知内容に関連する会話があったとしても,2時間,原告が完全に被告の指揮監督から解放されていたとまで認めるに足りる証拠はない。
 そうすると,休憩時間が2時間であるとの被告の主張を認めることはできず,休憩時間は1時間として計算するのが相当である。
(4)原告の時間外労働(残業),深夜労働
 以上によると,原告は,ワーキングフォーム(甲1の各号)への記載をしていたが,ときには,一定期間をまとめて記載していたこと,その際は,特にメモなどによらず,記憶によって記載していたことが認められる(原告本人)。その結果,他の証拠から認められる事実と明らかな齟齬もあるが,全体として,自分の業務実態を記憶して,これに基づき再現しようとしたものと認めることができ,これらを総合考慮し,上記ワーキングフォームの記載から求められる時間外労働(残業)のうち,約3分の2程度の時間外労働(残業)を認めるのが相当である(法定内時間外労働(残業)については,1日の労働時間が8時間を切らない限り,就労した日数に1時間を乗じる。)。
 なお,深夜労働については,被告も認める前記エの限度(平成14年12月24日の7時間,平成15年3月10日の7時間,同年3月31日の1時間)及び解雇直前の平成15年10月20日から21日午前5時(解雇の正確な時刻は必ずしも不明未明であるが,午前5時まで拘束されていたと同視すべきである。)にかけての7時間を認めるのが相当である。
 したがって,原告の平成14年10月分(9月30日分を含む。)から平成15年10月分までの時間外労働(残業),深夜労働は,別紙2〈28頁〉割増賃金(残業代)等算定表記載のとおりとなる。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士の費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇刑事事件借金の返済敷金返還や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年5月30日土曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。


(エ)J証言について
a 平成15年4月23日の件
 原告のワーキングフォームの同日欄によると,原告の退社時刻は午後8時25分と記載されている(〈証拠略〉)。
 これに対し,Jは,平成15年4月23日,午後5時に出社し,一旦,大阪市都島区の製薬会社に資料を届けるため,外出し,午後7時30分には帰社したが,その際には,原告は既に退社して,在室していなかったと供述する。
 しかし,Jが,上記同日,午後5時に出社したからといって(〈証拠略〉),直ちに,資料を届けるよう命じられたかどうかは不明であり,これを裏付ける証拠はない。
 また,Jの証言によると,結局,資料を届けようとした相手方の担当者が不在であるため,資料を持って帰社したというのであるが(〈人証略〉),そのような場合,せっかく,都島区まで来たのであるから,最終的に,乙山の指示を仰いで帰社するにしても,それまでの間に,何らかの措置を講じようとし,一定程度の時間を消費するのが普通であることを考えると,果たして,2時間30分で全ての作業を終えて,帰社することができたのかどうかについても疑問の余地がある。
 さらに,Jが帰社した際,原告を見かけなかったということについても,裏付けがある訳ではない。Jは,原告と乙山のやりとりを聞くのが苦痛であり,平成15年4月23日は,これを聞かなかったと述べる。その理由として,Jは,原告と乙山のやりとりを聞くのが苦痛で,原告を避けたり,原告の在室の有無が関心事であったという証言をする(〈人証略〉)。しかし,Jが被告でアルバイトするようになって,原告と勤務時間が重なっている日は,平成15年4月23日で4回目である(〈証拠略〉)。それまでの3回で,果たして,Jにとって,原告の在室の有無が大きな関心事となっており,外出の後,帰社して,原告が在室していなかったことについての記憶を保持し続けるだけの関心事であったといえるかは疑問の余地がある(何か特徴的な出来事を伴う在室についての記憶であれば,それなりに信用することができるが,単に,自分の避けたい人が在室していなかったというだけの記憶の信用性はそれほど高いとはいえず,しかも,その時点で,避けたいという気持ちが強かったとまで認めるのは困難である。)。
b 平成15年5月14日の件
 原告のワーキングフォームの同日欄によると,原告の退社時刻は,午後8時44分と記載されている(〈証拠略〉)。
 これに対し,Jは,平成15年5月14日,午後5時に出社し,宅配便を届けるよう指示され,被告事務所の近くにある宅配便の取扱店の場所を知らずに,遠くの取扱店まで行ったため,1時間10分から1時間15分ほどかけて,帰社し,その後1時間ほどして原告が退社したと供述する(〈人証略〉)。
 この点についても,Jが,上記同日,午後5時に出社したからといって(〈証拠略〉),直ちに,宅配便を届けるよう命じられたかどうかは,これを裏付ける証拠はない。
 また,仮に,用事を済ませて帰社するまでに1時間10分程度しか要しなかったとしても,帰社後,原告が退社するまでの時間が1時間程度であったことを裏付ける証拠もない。
 例えば,入れ替わりであったというような状況があり,短時間であったという供述であればともかく,4年近く前の記憶に基づく供述であることを考えると,帰社後,原告が退社するまでの時間が1時間程度であったという供述を,そのまま採用することは困難である。
(オ)帯状庖疹の治療
 乙山は,原告が,平成14年の秋から,帯状庖疹に罹患し,その治療等のため,半休,早退が多く,当時の勤務実態と甲1号証の各号の記載とが符合しない旨供述する(〈証拠略〉)。
 しかし,原告の病状や治療状況について,原告の主張を裏付ける証拠はなく,原告の供述(〈証拠略〉,原告本人)に照らしても,乙山の供述を直ちに採用することはできない。
(カ)食事中の退社について
 また,被告は,平成15年8月25日,27日,9月5日,24日,10月9日,食事のために,被告事務所に鍵を掛けて外出しているにもかかわらず,外出時間中に原告が退社する可能性はないと主張する。
 一方,同年8月13日には,乙山が,午後7時45分ころ,原告を同行して,飲食店を訪れているのに,原告が午後9時15分に退社する可能性はないと主張するので,以下,検討する。
 なお,原告は,被告事務所では,施錠しないので,乙山や他の従業員が外食に出た後でも,原告が退社することはあり得るという趣旨の供述をし(〈証拠略〉,原告本人),証人Aも同様の供述をする(〈人証略〉)。
 しかし,時間帯にもよるが,夜間,被告事務所の施錠をせずに外出することは考えにくく,学生アルバイトであるCらの供述(〈証拠略〉)に照らしても採用できない。
a 平成15年8月25日の件
 証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によると,乙山は夫とともに,平成15年8月25日,外出し,午後10時48分に飲食店に入店し,午後11時48分に会計を済ませたことが認められる。
 一方,原告のワーキングフォームの同日欄によると,原告の退社時刻は,午後11時14分と記載されているが(〈証拠略〉),他に被告事務所には誰もいなかったことを考えると(〈証拠略〉,弁論の全趣旨),上記退社時刻の記載は信用できない。
b 平成15年8月27日の件
 証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によると,乙山は夫と,その友人であるIとともに,平成15年8月27日,外出し,食事をしたことが認められる。
 一方,原告のワーキングフォームの同日欄によると,原告の退社時刻は,午後10時18分と記載されている(〈証拠略〉)。
 乙山らが食事をした時刻は,不明であるが,店名から通常の飲食店であることが窺えることや(深夜営業しているとは考えにくい。),その勘定が合計2万9440円であることから考えると,被告事務所を出た時刻は,午後10時18分より前であったと推認でき,原告の他に被告事務所には誰もいなかったことを考えると(〈証拠略〉,弁論の全趣旨),上記退社時刻の記載は信用できない。
c 平成15年9月5日の件
 証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によると,乙山は夫と,学生アルバイトのDとともに,平成15年9月5日,外出し,食事をし,午後11時45分に会計を済ませたことが認められる。
 一方,原告のワーキングフォームの同日欄によると,原告の退社時刻は,午後10時19分と記載されている(〈証拠略〉)。
 乙山らが外出した時刻は不明であり,上記の外食の事実だけで,必ずしも,上記退社時刻の記載の信用性を否定することは困難というべきである。
 なお,乙山は,この日に食事をした飲食店は,ラストオーダーが午後9時30分で,それ以降は入店できないと述べるが(〈証拠略〉),ラストオーダーが午後9時30分であるのに,会計が午後11時45分にされたというのも,若干不自然というべきである。
d 平成15年9月24日の件
 証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によると,乙山は夫とともに,平成15年9月24日,外出し,食事をしたことが認められる。
 一方,原告のワーキングフォームの同日欄によると,原告の退社時刻は,午後8時39分と記載されている(〈証拠略〉)。
 乙山らが外出した時刻は不明であり,上記の外食の事実だけで,上記退社時刻の記載の信用性を否定することは困難である。
e 平成15年10月9日の件
 証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨によると,乙山は夫とともに,平成15年10月9日,外出し,食事をし,午後11時34分に会計を済ませたことが認められる。
 一方,原告のワーキングフォームの同日欄によると,原告の退社時刻は,午後10時48分と記載されている(〈証拠略〉)。
 乙山らが入店した時刻は不明であるが,伝票(〈証拠略〉)から窺える食事の内容や被告事務所との距離を考えると,乙山らが被告事務所を出た時刻は,午後10時48分より前であったと推認でき,原告の他に被告事務所には誰もいなかったことを考えると(〈証拠略〉),上記退社時刻の記載は信用できない。
f 平成15年8月13日の件
 乙山が,平成15年8月13日午後7時45分ころ,原告を同行して,外出し,食事をしたことを裏付ける証拠はなく,原告のワーキングフォームの同日欄の記載の信用性を否定することは困難である。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士の費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇刑事事件借金の返済敷金返還や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年4月23日木曜日

不払い残業代請求

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

ウ 原告のワーキングフォーム(甲1の各号)の記載と矛盾する点
 被告は,次のとおり,原告のワーキングフォーム(甲1の各号)の記載が,客観的な事実と矛盾しており,虚偽であると主張するので,以下,検討する。
(ア)平成15年8月のインターホン工事について
 被告は,乙山の自宅と被告の事務所が入居しているマンションのインターホン工事が行われた際,管理組合の代表であった乙山が,被告事務所を工事担当者らとの協議などを行う場所として開放し,平成15年8月7日(木),8日(金),12日(火),20日(水),21日(木),22日(金)及び28日(木)には,被告事務所において,原告が用いているテーブルを使用して工事担当者と打合せをしているので,上記の日に原告が午後8時以降まで残業をした可能性はないと主張する。
 また,被告は,平成15年8月20日(水),21日(木),23日(土),24日(日),25日(月),26日(火),27日(水),28日(木),30日(土),9月25日(木),29日(月),工事が実施され,工事業者は,毎日午後7時前後,乙山宅に工事の経過と結果を報告しており,その際,被告事務所の原告の席を使っていたと主張する一方,管理組合の代表としての打合せは,原告の出勤日でない土・日に実施されていたとも主張する。
 このように,被告の主張は一定しておらず,しかも,上記の日に打合せがされたとしても,必ず原告の使用するテーブルを使用して打合せをしたと認めるだけの証拠はなく,被告の主張を前提とすることは困難である。
 さらに,被告の主張するとおり,乙山が,和菓子で工事業者をねぎらったことがあるとしても,それは,乙山宅の工事が実施された同年8月20日と21日のことであり,それ以外の日に,工事業者が,経過と結果報告のために,被告事務所(もしくは乙山宅)を訪れることがあったとしても,原告の席を一定時間にわたって占拠するということは考えにくい(通常,それぞれ各戸の工事が終了したことを告げるだけであると推測される。)。
(イ)学生アルバイトとの競合について
 被告は,被告事務所の席は6席しかなく,うち1席は乙山専用であり,平成15年8月1日,4日,10月6日,7日には,学生アルバイトの数(5名)から,原告が事務所にいる場所がなくなっているはずであるとして,上記の日に残業をすることはあり得ないと主張する。
 しかし,平成15年8月1日についていえば,学生アルバイト5名が揃うのは,午後5時になってからであり,その時点では,未だ原告の所定労働時間内である。一方,学生アルバイトのうち1名は,午後6時には退社している(〈証拠略〉)。
 また,平成15年10月6日,7日は,その前後を通じ,学生アルバイトの数は多くなっているが,仮に学生アルバイトの数が被告の主張どおりであったとしても,原告の居場所や仕事が直ちになくなるとは考えられない。
(ウ)学生アルバイトらの目撃供述
a Cの供述
 Cは,平成15年10月のうち,13日間アルバイトし,その間6日は原告の勤務と交錯したが,原告がCより退社が遅かったのは1回だけであると述べる(〈証拠略〉)。
 しかし,原告の退社が自分より遅かったのが1回だけであるとの記憶をそのまま信用できるかについては,上記陳述書の作成が平成18年5月21日であり(〈証拠略〉),2年以上が経過した後の供述であることや,Cが被告でアルバイトをしていたのは平成15年5月から平成17年6月までであるが(〈証拠略〉),そのうち,平成15年10月に限定して,上記のような特定が可能であるかについて,疑問の残るところである。むしろ,Cは,夕刻出社し,5時間を一区切りとしてアルバイトをしていたというのであるから(〈証拠略〉),6分の1の確率であっても,Cより退社時刻が遅かったことは,原告の残業(しかも,相当遅くまでの残業)が,必ずしも珍しくないものであったことを窺わせる。
b Dの供述
 Dは,「乙山が夕食を作ることがあり,これが出されるのが午後10時30分であったが,原告は既に退社しているか,食事を辞退して,退社していた。」旨の供述をする(〈証拠略〉)。
 しかし,上記供述中,夕食が提供された日を特定する証拠や,時刻を具体的に裏付ける証拠はない。むしろ,上記供述によると,午後10時30分ころ,原告が未だ退社前であることを前提とした内容の供述を含んでいることを指摘できる。
c Eの供述
 Eは,平成15年3月13日と14日は,乙山とだけで長時間仕事をしており,原告はいなかったと供述する(〈証拠略〉)。
 原告のワーキングフォームの記載によると,原告は,平成15年3月13日は午後11時15分まで,同月14日は午後10時25分まで勤務したこととなっているが(〈証拠略〉),Eの上記記憶が正確であるという裏付けはなく,上記日時における原告のワーキングフォームの記載が誤りであると認めることはできない。
 また,Eは,平成15年7月7日午後8時過ぎ,被告事務所にいた乙山らと4名全員で外食したが,原告はいなかったと供述するが,時刻を裏付ける証拠はなく,原告のワーキングフォーム(〈証拠略〉)の同日欄の記載(午後8時55分に退社)の信用性を直ちに減殺するとはいえない。
d Fの供述
 Fは,「平成14年12月25日,原告が,乙山から何度もいわれて,ようやく退社した。乙山から『びっくりしたでしょ。いつも帰ってもらうのに一騒動なの。』というようなことを言われた。」旨供述する(〈証拠略〉)。
 上記供述からは,原告の退社した時刻は明確ではないものの,日常的に,所定労働時間を超えて,原告が退社しないことがあったことを窺わせる(これが,業務命令に基づくものかどうかについては,別問題となる。)。
e Gの供述
 Gは,平成15年2月21日午後9時15分、被告事務所にいた乙山らと3名全員で外食したが(〈証拠略〉),原告はずっと前に退社していなかったと供述するが(〈証拠略〉),それぞれの時刻を裏付ける証拠はなく,原告のワーキングフォーム(〈証拠略〉)の同日欄の記載(午後9時8分に退社)の信用性を直ちに減殺するとはいえない。
f 乙山次郎の供述
 乙山次郎は,「学校を終えて(被告事務所に)帰宅するのは遅くて午後10時であったが,被告事務所で原告を見かけたことは数回である。」旨の供述をする(〈証拠略〉)。 
 しかし,乙山次郎が,帰宅したからといって,必ず,直ちに被告事務所に顔を見せるということがどの程度あるのかは不明であり,直ちに,上記供述が,原告のワーキングフォームの記載の信用性を減殺するとはいえない。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返還請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年3月3日火曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

2 原告の時間外労働(残業),深夜労働の有無
(1)ワーキングフォームの記載
ア はじめに
 原告の請求は,甲1の各号に記載された出退勤時刻を前提にしたものである。
 これに対し,被告は,甲1の各号について,原告が,解雇された後の,平成15年10月22日,23日,被告事務所に無断で侵入し,まとめて書いたもので,その記載内容は信用できないという趣旨の主張をする。
 確かに,甲1の各号の記載内容は,原告自身,一定程度のまとめ書きをしていたと供述しており(〈証拠略〉,原告本人),また,後述のとおり,関係証拠に照らし,符合しない箇所がある。
 このため,記載内容が正確であるとは言い難い。
 一方で,例えば,徹夜に近い残業があったことについての記載は,被告の主張とも一致している。
 そうすると,甲1の各号の記載を全くのでたらめとはいえず,無視することは困難である。
 そこで,甲1の各号の記載内容がどの程度信用でき,時間外労働(残業)の算定に用いることができるかについて,以下,検討する。
イ ワーキングフォームの作成経緯(まとめ書きの可能性)
(ア)ワーキングフォーム作成の指示
 ワーキングフォームの作成経緯については,前記1(3)ウのとおりである。
 被告は,甲1の各号は,被告が作成を指示したものではないと主張するが(被告の主張(1)参照),一方で,原告に対し,ワーキングフォームの作成を指示したこと自体を否定しているわけではない(〈証拠略〉,被告代表者本人)。
 被告としては,甲1の各号は,原告が平成15年10月22日,23日に書き上げたもので,被告の指示に基づき作成されたワーキングフォームとは異なるという趣旨の主張をしているものと解されるが,被告の指示に基づき作成されたワーキングフォームが別に存在するとの立証はなく,その形跡も窺えない。むしろ,前記1(3)ウ(ウ)に述べた経緯により,原告は,平成13年6月以降,被告の指示に基づき,ワーキングフォームを作成していたことが認められる(〈証拠略〉)。したがって,甲1の各号の記載の信用性はともかく,その一部の記載は,被告の指示に基づくものと認めるのが相当である。
 なお,乙山は,Aが平成14年8月に退職した後,原告に対して,ワーキングフォームへの記載を指示していないと供述するが(〈証拠略〉),中止するよう指示したとまで述べるものではなく,原告が,その後も,ワーキングフォームへの記載を続けたとしても不思議ではない。
(イ)原告がワーキングフォームの原本(〈証拠略〉)から写し(〈証拠略〉)を作成した日時について
 原告は,平成15年10月21日の未明に解雇の意思表示を受けたが,ワーキングフォームの同日欄には,退勤時刻として午後2時10分と記載されている。
 この記載は,解雇の意思表示を受けた後の事実に関する記載であるから,原告が,解雇後,被告事務所を訪れて記載したものである。
 原告は,同年10月22日,23日,被告事務所を訪れており(〈証拠略〉),上記記載は,その際にされたものであると認められる。
 また,上記記載の含まれた甲1の各号のコピーも,当然,その際にされたことが認められる。
(ウ)ワーキングフォームの記載ミスの訂正について
 被告は,ワーキングフォームの記載の訂正箇所やその内容から,ワーキングフォームの記載は,まとめ書きしたものであり,信用できないと主張する。
 たしかに,甲1の8によると,平成15年4月21日から7日分の記載が,いずれも午前8時台となっているのを午前9時台に訂正しているが,このような記載は,一斉に記載かつ訂正したことを窺わせる。
 しかし,原告自身,まとめ書き自体を否定しておらず(前記1(3)ウ(ウ)参照),上記のような訂正があるからといって,平成15年10月22日,23日に,全てをまとめ書きしたとはいえない。
(エ)乙2の各号の原本の形状から窺える事情(その1)
 被告は,乙2の各号のアミノ酸反応から,原告のワーキングフォームからは他の学生アルバイトのワーキングフォームに比べ,指紋検出の個数が極端に少ないことが判明したとし,本件解雇のころ,まとめ書きしたと主張する。
 たしかに,証拠(〈証拠略〉)によると,原告のワーキングフォーム(乙2の各号)に指紋の付着している個数が,原告以外の従業員のワーキングフォームに比べ少ないことが窺われる。もっとも,対象となった学生アルバイトのワーキングフォームは,その対象資料(サンプル)として妥当とはいえない(本来であれば,原告のワーキングフォームの指紋付着量が著しく少ないことを立証するためには,多くの対象資料との比較を必要とする。)。
 仮に,上記証拠のとおり,原告と他の学生アルバイトのワーキングフォームを比べ,指紋の付着量が異なるとしても,原告が,1週間くらいのまとめ書きをしていたとするなら(原告本人。しかし,そのことにより,記載の信用性が低下することは否定できない。),矛盾する現象とはいえない。
 また,学生アルバイトのワーキングフォームは,時給の算定のために,学生アルバイト自身以外の者が,これを点検し,労働時間を計算する必要があるが,そのため,原告のワーキングフォームより,多人数が,多数回触れる機会は多かったということができる。
(オ)乙2の各号の原本の形状から窺える事情(その2)
 被告は,光通過量検査と筆痕の凹凸差から,原告と他の学生アルバイトのワーキングフォームを比べると,原告のワーキングフォームの方の誤差の幅が狭いことから,同一機会に記載されたものであると主張する。
 たしかに,証拠(〈証拠略〉)によると,他の学生アルバイトと原告との間で,ワーキングフォームの上記数値を比較したところ,他の学生アルバイトの数値に比べ,数値の幅が狭い。
 しかし,毎日,同じ筆記用具で記載されたかどうかなどの条件についての考慮がされているとは思えず,上述した事情のみで,原告のワーキングフォームの記載が,同一機会になされたと認めることは困難というべきである。
 また,対象資料となるべき学生アルバイトのワーキングフォームは,Bの平成15年10月分しかなく,対象資料の観点からも,上記結論を導くことは困難である。
(カ)学生アルバイトらの目撃供述について
 学生アルバイトは,原告がワーキングフォームに記載していたのを目撃したことはないと供述する(〈証拠・人証略〉)。
 しかし,これらの学生アルバイトと原告の勤務時間が完全に重なっていることはなく(学生アルバイトは,夕方から出社することが多かった〔前記1(2)ア〕。),また,学生アルバイトが,当時の原告の行動(しかも,自分とは直接関係することのない行動)の有無を正確に記憶しているとは考えにくい。
 むしろ,平成15年10月22日,23日,原告が,ワーキングフォームのファイルを持ち出したことや,ワーキングフォームにまとめ書きをしたことを目撃した者がいないことからすると,原告がワーキングフォームに記載しているのを目撃したことがないとする学生アルバイトの供述の信用性は低いというべきである(なお,被告の主張によると,被告事務所は施錠されていたというのであるから,誰にも目撃されずに,ワーキングフォームのファイルを持ち出すことは困難である。)。
(キ)乙山の供述について
 乙山もまた,原告がワーキングフォームへ記載していたことを否定する趣旨の供述をするが,一旦,原告に対し,ワーキングフォームへの記載を命じた後(前記1(3)ウ(ウ)参照),その中止の指示は曖昧で,原告自身まとめ書きを否定していないことに照らすと,上記供述の信用性をそのまま認めることはできない。
(ク)まとめ
 以上によると,原告が甲1の各号の原本である乙2の各号を,平成15年10月22日,23日に,まとめて作成したと認めることは困難である。
 むしろ,原告は,平成13年6月以降,一定期間分をまとめ書きしながらも,当時の記憶に基づき,ワーキングフォーム(乙2の各号)を作成していたと認めるのが相当である。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返還請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年2月13日金曜日

サービス残業(残業代請求)

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

第3 当裁判所の判断
1 紛争を巡る経緯
 前提となる事実,証拠(〈証拠略〉,原告本人,被告代表者本人,後掲のもの)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。
(1)当事者
ア 被告
 前提となる事実(1)アのとおりである。
 乙山は,中国貿易に関する商社での勤務を経て,1人でアメリカ向けの輸出の仕事をし,その後,ドイツ系の出版社に勤務していたが,平成10年7月に退職し,独立した。
 当初,個人でスタートしたが,取引先の要望に従い,合資会社(被告)を設立した。
 被告は,常時,15名程度の学生アルバイトを雇用していたが,主に,大阪大学などの理系学部の大学生から採用していた。
イ 原告
 原告は,平成11年9月から3か月間,パートタイマー(時給900円)として雇われ,その後,フルタイムの正社員となった(月給22万円)。
(2)雇用契約に至る経緯
ア 従業員の募集
 被告は,医学関連の研究データを解析したり,解析データを整理して視覚化したりするほか,学会発表や論文投稿において,翻訳や印刷物の作成などによるサポート業務を行っていた。
 作業は,乙山が中心となり,これを学生アルバイトが分担,補助するという体制で行っていた。しかし,学生アルバイトは,授業などのため,主に夕刻から勤務することや,次第に多忙となっていったことから,被告は,午前中や日中,編集・製作の補助や庶務的な作業を担当するスタッフが必要となり,新聞やハローワークに求人募集を出した。
 2名の女性が応募し,被告は,平成11年9月,編集の補助(1名)と,庶務(1名)を採用することとしたが,その1,2週間後,ハローワークの募集を見て,原告が応募してきた。
イ 原告との雇用契約
 被告は,庶務として採用した女性が,隔日勤務であることや1日5時間程度しか勤務できないこともあり,原告を庶務及び編集・製作の補助のアルバイトとして,採用することとした。
 雇用契約の内容については,前提となる事実(2)アのとおりである。
ウ 正社員としての採用
 被告は,これら3名の女性アルバイトについて,採用後6か月間様子を見ることを予定していたが(試用期間でもあり,6か月後に正社員として採用するかどうかを判断するためのものと思われる。),他の2名は,平成11年中に相次いで退職したため,被告は,アルバイトとして採用した後3か月が経過した段階で,原告を正社員として採用することとした。
 雇用契約の内容については,前提となる事実(2)イのとおりである。
エ 時間外手当(残業代)不支給の合意
 原告と被告との間で,時間外手当(残業代)については,支給しないとの合意がされた(〈証拠略〉)。
(3)原告の業務内容
ア 前記(2)イのとおり,原告は,被告において,庶務及び編集・製作補助の業務に従事していた。
 具体的には,例えば,製薬会社などから著名な研究者を招いた座談会を企画し,その内容を記事にするような場合,座談会の場所の手配や,乙山の指示した資料のコピーを大阪大学の図書館で入手したり,座談会の内容のテープ起こしをしたりなどして,座談会の実施や,記事の作成の補助をしていた。
イ 就労条件の変更
 前提となる事実(2)ウのとおりである。
ウ 時間管理
(ア)学生アルバイトは,時給であったので,ワーキングフォーム(出退勤表)による時間管理がされていた。
 ワーキングフォームは,従業員毎にクリアブックに収納され,記入前の用紙とともに,1つのファイルに綴じ込まれていた。ファイルは,被告事務所に設置されており,学生アルバイトは,ファイルに綴じられたクリアブックから自分のワーキングフォームを取出し,出社時刻と退社時刻を記入していた。
 原告も,当初は,アルバイトであったため,ワーキングフォームへの記入を命じられていたが,パソコン入力で,一定期間分をまとめて記載していた(アルバイトであっても,フルタイムであったため,時間管理の必要性は,学生アルバイトに比べ低かったといえる。)。
(イ)その後,原告が,正社員として採用され,月額給与となり,しかも,前記(2)エのとおり,時間外手当(残業代)を支給しない旨の合意があったため,原告がワーキングフォームに記載する実質的な必要は低下し,被告も,原告のワーキングフォームの記載内容を確認することは,ほとんどなくなった。
(ウ)A(以下「A」という。)は,平成10年12月ころから,被告においてアルバイトとして勤務することがあったが,平成13年4月から,フルタイムの正社員として採用された。しかし,Aの勤務時間がルーズであり,同年4月以降,ワーキングフォームへの記載がなかったため,同年6月18日,被告がAに対し,ワーキングフォームへの記載を義務付け,併せて,同じ立場である原告にも同様にワーキングフォームへの記載を義務付けた(〈証拠略〉,原告本人8頁〈以下,頁数は略〉)。
 しかし,被告としては,原告のワーキングフォームへの記載内容については,あまり関心がなく,原告も,1週間分など,一定期間分をまとめて記載することもあった(原告本人)。
エ 乙山との言い争い
 原告は,自分の勤務スタイルに固執することが多く,乙山の指示に対し,反発したりすることが多かった。その結果,お互いが譲ることなく,長時間言い争いとなることがあり,学生アルバイトが辟易するほどであった。
(4)解雇
 被告は,平成15年10月21日から神戸市内のホテルで開催された国際学会(CCT主催)において,ニュース発信(毎日,ニュースを会員に配る。)を請け負い,同年10月19日から,仕事部屋用にスイートルームを1部屋,宿泊用を4部屋確保していた。
 同年10月21日の未明,原告がホテルでの宿泊を希望し,学生アルバイトより,自分を優先しようとしたことに対し,乙山が激怒し,その場で解雇を通告した。
(5)時間外手当(残業代)の請求
 原告は,被告に対し,平成15年10月30日付の書面(〈証拠略〉)を送付し,平成13年11月分から2年間分の時間外手当(残業代)として311万6794円の請求をした。
 その後の平成15年12月8日,原告は,茨木労働基準監督署に労働基準法37条違反の申告をし,労働基準監督官が被告事務所に臨検の上,乙山から事情を聴取するなど調査をしたが,双方の言い分が全く異なるため,「始業・終業の時刻を記録するなど労働時間の管理を行うこと。」と是正勧告をしただけで,それ以上の措置をとることはなかった(〈証拠略〉)。
企業の方で、残業代請求についてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇敷金返還・原状回復義務借金の返済刑事事件遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。

2009年1月23日金曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

第2 事案の概要
1 前提となる事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)当事者
ア 被告
 被告は,医学系の学会やその関連事業の企画運営,出版などを業とする合資会社である。
 被告は,平成10年9月21日に設立され,当初の所在地は,大阪府吹田市〈以下略〉であったが,平成12年10月27日,現在の住所地に移転した。被告の本店事務所は,被告代表者である無限責任社員乙山月子(以下「乙山」という。)の自宅と隣接している。
 被告は,15名程度の学生アルバイトを雇い,フルタイムの従業員は,1,2名であった。
イ 原告
 原告は,平成11年9月,被告に雇用され,平成15年10月21日に解雇されるまで,被告のもとで就労した。
(2)雇用契約
ア アルバイトとしての採用
 原告は,平成11年9月,被告にアルバイトとして採用された。
 賃金は時給900円で,半年間様子を見るという約定であった。
イ 正社員としての採用
 原告がアルバイトとして採用され,3か月が経過したころ,平成12年1月から,被告に正社員として採用されることとなった。その際,合意した契約内容は,次のとおりである。
(ア)給与
月額22万円
月末締めの翌月5日支払
(イ)労働時間
所定就業時間 午前10時から午後6時まで
休憩時間 1時間
(ウ)所定休日
土・日・祝祭日
ウ 雇用契約の内容の変更
 その後,昇給があり,平成14年は月額24万円,平成15年は月額25万円であった。
 所定労働時間が変更となったか否かについては,当事者間に争いがある。
 なお,被告にはフルタイムの従業員が原告しかいなかったため(一時,2名の時期があった。),原告に適用されるべき就業規則,給与規定の制定はなかった。
(3)解雇
 原告は,平成15年10月21日,解雇された。
2 原告の請求(訴訟物)
 原告は,被告に対し,平成14年10月分(9月30日分を含む。)から平成15年10月分までの時間外労働(残業)、深夜労働に関する未払割増賃金(残業代)等として173万9065円及びこれに対する遅延損害金の支払と,付加金として上記割増賃金(残業代)等のうち平成15年3月分から平成15年10月分までの77万5191円と同額の金員の支払を求めている。
3 争点
(1)原告の時間外労働(残業),深夜労働の有無
(2)割増賃金(残業代)等の算定
(3)付加金
4 争点に関する原告の主張
(1)原告の時間外労働(残業),深夜労働の有無
 原告は,平成14年10月分(9月30日を含む。)から平成15年10月分までの間,別紙1〈略〉超過勤務手当計算表のとおり,所定労働時間及び法定労働時間を超えて時間外労働(残業)をした。 
 なお,乙3の1ないし17のパソコン入力のワーキングフォーム(出退勤表)は,原告が作成したものではない。
(2)割増賃金(残業代)等の算定
ア 原告の月額給与は,平成14年12月分まで24万円であり,平成15年1月分以降25万円であった。したがって,割増賃金(残業代)の計算の基礎となる賃金は,平成14年12月分までが時間単価1385円,平成15年1月分以降が時間単価1443円となる。
〔計算式〕
(円/月)(月/年)(週/年)(時間/週)(円/時間)
240,000 ×12 ÷52 ÷40 =1,385
(平成14年12月まで)
250,000 ×12 ÷52 ÷40 =1,443
(平成15年1月以降)
 これに前記(1)の労働時間を乗じ,所定時間外労働(残業)のうち,法定外時間外労働(残業)については0.25の割増を,深夜勤務についてはさらに0.25の割増をして計算すると,上記期間の割増賃金(残業代)等の合計金額は,別紙1超過勤務手当計算表のとおり173万9065円となる。
イ 不支給の合意について
 なお,割増賃金(残業代)不支給の合意は,公序良俗に反し,無効である。
(3)付加金
 被告は,原告に対し,平成15年3月分(平成15年4月5日支払日)以降の法定時間外労働(残業)及び深夜労働に対する割増賃金(残業代)に相当する77万5191円を付加金として支給すべきである。
5 争点に関する被告の主張
(1)原告の時間外労働(残業),深夜労働の有無
 被告は,原告に対し,午後6時までに退社するよう指示していたが,原告は,被告の費用で提供される夕食を食べて帰ることが多かった。仮に,原告の退社時刻が所定の終業時刻を越えることがあったとしても,時間外労働(残業)の実態はなかった。
 なお,原告が提出するワーキングフォーム(甲1の各号)については,被告が作成を指示したものではない。また,その記載の根拠は示されておらず,数字の羅列に過ぎない。
(2)割増賃金(残業代)不支給の合意
 原告と被告は,雇用契約締結時,時間外手当(残業代)については,給与面で評価するので,これを支払わない旨合意した。
 また,被告は,原告に対し,バイク通勤にもかかわらず月額3万円の交通費を支給したり,毎月多額の昼夜の食事代を支給したりしていたが,これらの措置も,原告に対し時間外手当(残業代)を支給しない代償措置であった。
 したがって,仮に,時間外労働(残業)が認められても,被告の支払義務はない。
(3)付加金
 仮に,原告に対し,支給されるべき時間外手当(残業代)があるとしても,前記(2)のとおり,不支給の合意があったことや,被告が代償措置を講じていたことなどに照らすと,被告に対し付加金の支払を命じることは不相当である。

なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返還(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。