2010年5月18日火曜日

労務問題(残業代請求など):配転命令について

顧問弁護士(法律顧問)としてよく聞かれるテーマをまとめます。

今回は配転命令についてです。

使用者の労働者に対する配転命令権は、労働契約によりあらかじめ根拠づけられていて、使用者は、通常、同意を要せず、労働者に配転を命じることができます。

具体的には、通常は、「業務の必要性に応じて配置転換、転勤を命ずることがある」という条項が就業規則に定められ、それが労働契約の内容になります。また、労働契約締結に際し、労働者が将来の配転命令に同意する旨の誓約書を書いて使用者に提出することもあります。

ただ、使用者の配転命令権は全くの無制限に認められるわけではありません。労働契約自体により、または権利濫用の法理により制限されることがあります。

まず、労働契約自体により制限される場合をみていきましょう。

労働契約において労働者の職種が限定されている場合には、職種を変更するには労働者の個別の同意が必要です。特殊な技能や資格を要する職種(例:医師)は、黙示的に職種が限定されていると考えられるケースもありえます。

また、労働契約において、労働者の勤務場所を限定している場合には、その場所を変更するには労働者の個別の同意が必要です。この場合も、黙示的に勤務場所が限定されているとみられるケースがあるでしょう。

次に、権利濫用の法理をみていきましょう。

配転命令が使用者の権利の濫用と認められるときは、配転命令は無効となります。

最高裁判例(昭和61・7・14)は、転勤命令について、「転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもない。」「当該転勤命令につき、業務上の必要性がない場合又は業務上の必要性がある場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機、目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等」には」権利の濫用になるとしています。

たとえば、家族の療養看護や育児の必要性に配慮が全くない遠隔地への転勤命令などは、労働者に著しい不利益を負わせるものであり、権利の濫用となりえます。


以上につき、不明な点がありましたら、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。

その他、残業代の未払いなど法律問題にお悩みの方も弁護士にご相談ください。

ブログトップ
他のブログ