2011年2月3日木曜日

顧問弁護士がかかわる判例

今日は、企業の顧問弁護士の業務に係る企業法務の判例を紹介します。

1 本件は,権利能力のない社団であるA(以下「A」という。)を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する上告人が,第1審判決別紙物件目録記載の各不動産(以下「本件不動産」という。)は,Aの構成員全員に総有的に帰属しており,本件不動産の登記名義人である被上告人は,民事執行法(以下「法」という。)23条3項所定の「請求の目的物を所持する者」に準ずる者であると主張し,上記債務名義につき,被上告人を債務者として本件不動産を執行対象財産とする法27条2項の執行文(以下「本件執行文」という。)の付与を求める事案である。
 原審は,権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者が,当該社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産(以下「構成員の総有不動産」という。)に対して強制執行をしようとする場合において,上記不動産につき,当該社団の代表者がその登記名義人とされているときは,法23条3項の規定を拡張解釈して,上記債権者は,上記債務名義につき,上記代表者を債務者として構成員の総有不動産を執行対象財産とする執行文の付与を求めることができると解するのが相当であるが,本件不動産の登記名義人である被上告人は,そもそもAの構成員でなく,その代表者でないから,上告人は本件執行文の付与を求めることはできないとして,上告人の請求を棄却すべきものとした。
2 そこで検討すると,権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者が,構成員の総有不動産に対して強制執行をしようとする場合において,上記不動産につき,当該社団のために第三者がその登記名義人とされているときは,上記債権者は,強制執行の申立書に,当該社団を債務者とする執行文の付された上記債務名義の正本のほか,上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の上記債権者と当該社団及び上記登記名義人との間の確定判決その他これに準ずる文書を添付して,当該社団を債務者とする強制執行の申立てをすべきものと解するのが相当であって,法23条3項の規定を拡張解釈して,上記債務名義につき,上記登記名義人を債務者として上記不動産を執行対象財産とする法27条2項の執行文の付与を求めることはできないというべきである。その理由は,次のとおりである。
 権利能力のない社団の構成員の総有不動産については,当該社団が登記名義人となることはできないから(最高裁昭和45年(オ)第232号同47年6月2日第二小法廷判決・民集26巻5号957頁参照),権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者が,構成員の総有不動産に対して強制執行をしようとする場合,債務名義上の債務者と強制執行の対象とする上記不動産の登記名義人とが一致することはない。そうであるにもかかわらず,債務名義上の債務者の所有財産につき,当該債務者をその登記名義人とすることができる通常の不動産に対する強制執行と全く同様の執行手続を執るべきものと解したならば,上記債権者が権利能力のない社団に対して有する権利の実現を法が拒否するに等しく,かかる解釈を採ることは相当でない。上記の場合において,構成員の総有不動産につき,当該社団のために第三者がその登記名義人とされているときは,登記記録の表題部に債務名義上の債務者以外の者が所有者として記録されている不動産に対する強制執行をする場合に準じて,上記債権者は,上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の上記債権者と当該社団及び上記登記名義人との間の確定判決その他これに準ずる文書を添付して、当該社団を債務者とする強制執行の申立てをすることができると解するのが相当である(民事執行規則23条1号参照)。
 これに対し,法23条3項の規定は,特定物の引渡請求権等についての強制執行の場合を予定しているものであるし,法27条2項に規定する執行文付与の手続及び執行文付与の訴えにおいて,強制執行の対象となる財産が債務名義上の債務者に帰属するか否かを審理することも予定されていないことからすると,法23条3項の規定を金銭債権についての強制執行の場合にまで拡張解釈することは許されないものというべきである。 
3 以上によれば,上告人は本件執行文の付与を求めることはできないから,上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は,採用することができない。
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