2010年11月26日金曜日

交通事故の後遺障害逸失利益についての判例

後遺障害逸失利益についての判例です。上記に認定の事実と甲第二一号証、同第二五号証及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和二七年三月一〇日生まれの男性で(症状固定時四七歳)、昭和四五年三月に木下製作所に入社し、以来約三〇年、電気課員として、紙処理機の製造、組み立て、配電及び修理を担当してきたこと、本件の交通事故当時は、一〇人程度のスタッフのサブリーダーの地位にあったこと、本件交通事故後、原告は、鎖骨骨折の治療のため、平成一一年一月二九日から同年八月二〇日までの間欠勤し、職場復帰後も重量物が持ち上げられず、他のスタッフの手を借りたりしているが、原告としては、周囲に右腕が使いにくいことは隠して仕事に取り組んでいること、平成一四年四月に人員整理が実施され、スタッフは三人となり(各人の負担は増加した)、他部門から異動してきた者がサブリーダーとなり、原告はサブリーダーとしての手当の支給が受けられなくなったが、給与の減少はないことがそれぞれ認められる。上記に認定の事実を勘案すると、原告の後遺障害については、本件交通事故前年の年収である七一二万八六六四円(甲第六号証)を基礎収入として、症状固定日から一〇年間(年五%のライプニッツ係数は七・七二二)にわたって、三%の労働能力を喪失したものとして、その逸失利益を認めるのが相当である。けだし、上記二に認定の原告の後遺障害の内容・程度によれば、労働能力喪失率は一四%程度と認められるものの、上記に認定の事実によれば、原告の降格は、その後遺障害によるものか否かは明らかではないから、手当の減少は、本件交通事故によるものと即断できず、その他の給与面での不利益な取扱いは受けていないことから、原告は、現状においては、後遺障害による財産上の不利益を被っているものとは認められない。しかしながら、上記に認定の事実によると、上記のように明らかな減収がないことは、原告自身の特段の努力によるものであり、かつ、将来の昇任等に際して不利益な扱いを受ける恐れは否定しきれないと認められ、これは後遺障害がもたらす経済的不利益を是認するに足りる特段の事情(最高裁昭和五六年一二月二二日第三小法廷判決・民集三五巻九号一三五〇頁)に該当すると言うべきであって、上記の事実から推認し得る不利益の可能性の程度、原告の収入額、症状固定時の年齢等に照らし、その不利益を金銭評価すると、上記判示のとおり、一〇年間にわたって三%の労働能力を喪失したものと同程度と評価するのが相当であるからである。よって、原告の後遺障害を症状固定時の現価に換算すると、次のとおり、一六五万一四二六円となる。
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