2010年11月26日金曜日

交通事故の後遺障害逸失利益についての判例

後遺障害逸失利益についての判例です。上記に認定の事実と甲第二一号証、同第二五号証及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和二七年三月一〇日生まれの男性で(症状固定時四七歳)、昭和四五年三月に木下製作所に入社し、以来約三〇年、電気課員として、紙処理機の製造、組み立て、配電及び修理を担当してきたこと、本件の交通事故当時は、一〇人程度のスタッフのサブリーダーの地位にあったこと、本件交通事故後、原告は、鎖骨骨折の治療のため、平成一一年一月二九日から同年八月二〇日までの間欠勤し、職場復帰後も重量物が持ち上げられず、他のスタッフの手を借りたりしているが、原告としては、周囲に右腕が使いにくいことは隠して仕事に取り組んでいること、平成一四年四月に人員整理が実施され、スタッフは三人となり(各人の負担は増加した)、他部門から異動してきた者がサブリーダーとなり、原告はサブリーダーとしての手当の支給が受けられなくなったが、給与の減少はないことがそれぞれ認められる。上記に認定の事実を勘案すると、原告の後遺障害については、本件交通事故前年の年収である七一二万八六六四円(甲第六号証)を基礎収入として、症状固定日から一〇年間(年五%のライプニッツ係数は七・七二二)にわたって、三%の労働能力を喪失したものとして、その逸失利益を認めるのが相当である。けだし、上記二に認定の原告の後遺障害の内容・程度によれば、労働能力喪失率は一四%程度と認められるものの、上記に認定の事実によれば、原告の降格は、その後遺障害によるものか否かは明らかではないから、手当の減少は、本件交通事故によるものと即断できず、その他の給与面での不利益な取扱いは受けていないことから、原告は、現状においては、後遺障害による財産上の不利益を被っているものとは認められない。しかしながら、上記に認定の事実によると、上記のように明らかな減収がないことは、原告自身の特段の努力によるものであり、かつ、将来の昇任等に際して不利益な扱いを受ける恐れは否定しきれないと認められ、これは後遺障害がもたらす経済的不利益を是認するに足りる特段の事情(最高裁昭和五六年一二月二二日第三小法廷判決・民集三五巻九号一三五〇頁)に該当すると言うべきであって、上記の事実から推認し得る不利益の可能性の程度、原告の収入額、症状固定時の年齢等に照らし、その不利益を金銭評価すると、上記判示のとおり、一〇年間にわたって三%の労働能力を喪失したものと同程度と評価するのが相当であるからである。よって、原告の後遺障害を症状固定時の現価に換算すると、次のとおり、一六五万一四二六円となる。
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2010年10月25日月曜日

内部統制システム

このブログでは、顧問弁護士(法律顧問)が問い合わせを受けることがあるテーマをまとめており、今日のテーマは、内部統制システムについてです。取締役会設置会社において、内部統制システムの整備について決定する場合は、取締役会で決議しなければなりません。大会社においては、内部統制システムの整備についての決定は義務になっています。内部統制システムの具体的な内容としては、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制に加え、以下の内容となります。

(業務の適正を確保するための体制)
第百条  法第三百六十二条第四項第六号 に規定する法務省令で定める体制は、次に掲げる体制とする。
一  取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
二  損失の危険の管理に関する規程その他の体制
三  取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
四  使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
五  当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
2  監査役設置会社以外の株式会社である場合には、前項に規定する体制には、取締役が株主に報告すべき事項の報告をするための体制を含むものとする。
3  監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合には、第一項に規定する体制には、次に掲げる体制を含むものとする。
一  監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項
二  前号の使用人の取締役からの独立性に関する事項
三  取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制
四  その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

内部統制システムの整備について取締役会で決議した内容の概要については、事業報告に記載しなければなりません。

会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください

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2010年8月2日月曜日

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマ:降格

顧問弁護士(法律顧問)がよく問い合わせを受けるテーマをまとめます。

今日は、降格についてです。

裁判例は、経営陣に対する批判的言動を行った従業員に対する降格処分と昇給査定の違法性を主張し、損害賠償を請求した事案において、請求の一部を認容しました。以下、判決文の要約です。

1審被告は,従業員が各級に該当する能力を有するか否かを判断するにつき大幅な裁量権を有していると解するのが相当であり,殊に本件で問題となっている4級該当能力を評価するについては,1級から3級までが一般従業員としての能力を要件としているのに対し4級は監督職として下位従業員に対する指導力が要件とされていることからみて,単に従業員として与えられた業務を遂行する能力のみならず,組織において部下を指導する上で職場内の秩序維持等にも責任を持つ能力もまたその該当能力を有するか否かの判断において重要な要素となるものというべきである。
1審被告が,1審原告につき4級に該当する職員として本件降格条項に該当するとして本件降格処分をしたことが違法であるとは認められない。
1審被告の昇給査定にこれらの実施手順等に反する裁量権の逸脱があり,これにより1審原告の本件賃金規程及び人事考課規程により正当に査定されこれに従って昇給する1審原告の利益が侵害されたと認められる場合には,1審被告が行った昇給査定が不法行為となるものと解するのが相当である。


会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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2010年7月30日金曜日

数量指示売買である土地の売買契約において、土地の面積が超過している場合に増額請求できるか

顧問弁護士(法律顧問)が問い合わせを受けるテーマをまとめています。

今日のテーマとしては、数量指示売買である土地の売買契約において、土地の面積が超過している場合に増額請求できるかについて扱います。

この点について、最高裁は、以下のとおり判断しました(判決文の引用です)。

民法565条にいういわゆる数量指示売買において数量が超過する場合,買主において超過部分の代金を追加して支払うとの趣旨の合意を認め得るときに売主が追加代金を請求し得ることはいうまでもない。しかしながら,同条は数量指示売買において数量が不足する場合又は物の一部が滅失していた場合における売主の担保責任を定めた規定にすぎないから,数量指示売買において数量が超過する場合に,同条の類推適用を根拠として売主が代金の増額を請求することはできないと解するのが相当である。原審の上記判断(2)は,当事者間の合意の存否を問うことなく,同条の規定から直ちに売主の代金増額請求権を肯定するものであって,同条の解釈を誤ったものというべきであり,この判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。


以上の点に不明なことがあれば、顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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2010年6月4日金曜日

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマ:会社分割と労働関係

顧問弁護士(法律顧問)が日々扱うテーマをまとめています。

今回は、会社分割と労働関係についてです。

会社分割と労働関係について、東京高裁(日本アイビーエム事件。会社分割を行った際、設立する会社へ承継される営業に含まれるとして分割計画書に記載された労働契約の相手方労働者である控訴人らが、被控訴人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、会社分割手続の違法等が不法行為にあたるとして損害賠償を請求した事案)は以下のように判断しました。

会社分割においては、承継営業に主として従事する労働者等の労働契約を含め分割計画書に記載されたすべての権利義務が包括的に新設会社に承継される仕組みが取られており、会社分割制度においては、その制度目的から、会社分割により労働契約が承継される新設会社が分割会社より規模、資本力等において劣ることになるといった、会社分割により通常生じると想定される事態がもたらす可能性のある不利益は当該労働者において甘受すべきものとされているものと考えられること、分割手続に瑕疵がありこれが分割無効原因になるときは分割無効の訴えによらなければこれを主張できないとされており、個々の労働者に労働契約の承継の効果を争わせることは、この分割無効の訴えの制度の例外を認めるものであり、会社分割によって形成された法律関係の安定を阻害するものであることを考慮すれば、労働者が5条協議義務違反を主張して労働契約の承継の効果を争うことができるのは、このような会社分割による権利義務の承継関係の早期確定と安定の要請を考慮してもなお労働者の利益保護を優先させる必要があると考えられる場合に限定されるというべきである。この見地に立ってみれば、会社分割による労働契約の承継に異議のある労働者は、分割会社が、5条協議を全く行わなかった場合若しくは実質的にこれと同視し得る場合、または、5条協議の態様、内容がこれを義務づけた上記規定の趣旨を没却するものであり、そのため、当該労働者が会社分割により通常生じると想定される事態がもたらす可能性のある不利益を超える著しい不利益を被ることとなる場合に限って、当該労働者に係る労働契約を承継対象として分割計画書に記載する要件が欠けていることを主張して、分割会社との関係で、労働契約の承継の効果を争うことができるものと解するのが相当であるというべきである

会社の方で、以上の点に不明なことがあれば、御社の顧問弁護士にご相談ください。

個人の方で、以上の点につき相談したいことがあれば、弁護士にご相談ください。

なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(未払い残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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2010年5月18日火曜日

労務問題(残業代請求など):配転命令について

顧問弁護士(法律顧問)としてよく聞かれるテーマをまとめます。

今回は配転命令についてです。

使用者の労働者に対する配転命令権は、労働契約によりあらかじめ根拠づけられていて、使用者は、通常、同意を要せず、労働者に配転を命じることができます。

具体的には、通常は、「業務の必要性に応じて配置転換、転勤を命ずることがある」という条項が就業規則に定められ、それが労働契約の内容になります。また、労働契約締結に際し、労働者が将来の配転命令に同意する旨の誓約書を書いて使用者に提出することもあります。

ただ、使用者の配転命令権は全くの無制限に認められるわけではありません。労働契約自体により、または権利濫用の法理により制限されることがあります。

まず、労働契約自体により制限される場合をみていきましょう。

労働契約において労働者の職種が限定されている場合には、職種を変更するには労働者の個別の同意が必要です。特殊な技能や資格を要する職種(例:医師)は、黙示的に職種が限定されていると考えられるケースもありえます。

また、労働契約において、労働者の勤務場所を限定している場合には、その場所を変更するには労働者の個別の同意が必要です。この場合も、黙示的に勤務場所が限定されているとみられるケースがあるでしょう。

次に、権利濫用の法理をみていきましょう。

配転命令が使用者の権利の濫用と認められるときは、配転命令は無効となります。

最高裁判例(昭和61・7・14)は、転勤命令について、「転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもない。」「当該転勤命令につき、業務上の必要性がない場合又は業務上の必要性がある場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機、目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等」には」権利の濫用になるとしています。

たとえば、家族の療養看護や育児の必要性に配慮が全くない遠隔地への転勤命令などは、労働者に著しい不利益を負わせるものであり、権利の濫用となりえます。


以上につき、不明な点がありましたら、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。

その他、残業代の未払いなど法律問題にお悩みの方も弁護士にご相談ください。

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2010年4月11日日曜日

顧問弁護士(法律顧問)のすすめ

もし顧問弁護士との間で契約を結んでいれば、その会社は、事務所で法律相談を行わなくても、いつでも、顧問弁護士に電話やメールで相談することができるんです。

だから、顧問弁護士に相談したいことがあれば、ちょっと電話やメールをしてみよう、と思えば、いつでも、顧問弁護士に相談できます。そのため、会社としては、社内に法律上気になることが生じたときに、いつでも、顧問弁護士の法律相談を受けることができるんですよ。

また、顧問弁護士との間で顧問契約を結んでいるのであれば、会社から顧問弁護士に対して毎月顧問料という形で法律相談料が事前に支払われているため、法律相談をするたびに、社内稟議・決裁を経る必要はないんです。この社内手続の簡略化も大きなメリットですよね。

さらに、法務の担当者だけではなく、会社の中の誰でも法律相談をすることができます。

そのため、会社としては、社内に気になることが発生したときに、社員なら誰でも、顧問弁護士の法律相談を受けることができますよ。

顧問弁護士を便利に使いこなしてみてください。

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2010年3月2日火曜日

法律顧問・顧問弁護士が扱うテーマ:ユニオンショップ協定

顧問弁護士(法律顧問)としてよく受ける問いについてまとめていきます。今回は、ユニオンショップ協定についてです。

ユニオンショップ協定とは、雇入れ後一定期間内に組合に加入しない労働者または脱退・除名により組合員資格を喪失した労働者を使用者が解雇することを義務付けた協定をいいます。

このユニオンショップ協定は、判例上有効である(争いがあります)とされていますが、その効力の範囲についても争いがあります。

この点について、三井倉庫港運事件(「会社に所属する海上コンテナトレーラー運転手は、双方が協議して認めた者を除き、すべて参加人組合の組合員でなければならない。会社は、同社に所属する海上コンテナトレーラー運転手で、参加人組合に加入しない者および参加人組合を除名された者を解雇する」というユニオンショップ協定にもとづき労働者が解雇された事案)において、最高裁は以下のように判断しました。

ユニオン・ショップ協定は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを失った場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより間接的に労働組合の組織の拡大強化を図ろうとするものであるが,他方、労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があり、また、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合(以下「締結組合」という。)の団結権と同様、同協定を締結していない他の労働組合の団結権も等しく尊重されるべきであるから、ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法九〇条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法二八条参照)。そうすると、使用者が、ユニオン・ショップ協定に基づき、このような労働者に対してした解雇は、同協定に基づく解雇義務が生じていないのにされたものであるから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、解雇権の濫用として無効であるといわざるを得ない。

これらについて、ご不明な点がありましたら、貴社の顧問弁護士(法律顧問)にお問い合わせください。

また、労働者の方で、法律問題でお悩みの方も、弁護士にご相談ください。



なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業の問題など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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2010年2月20日土曜日

残業代請求(サービス残業問題)の基礎:名ばかり管理職問題

このブログでは、顧問弁護士(法律顧問ともいいます)としてよく聞かれるテーマをメモしていきます。

今回は、名ばかり管理職を考えてみます。


法定の労働時間は、「1日8時間、1週40時間」が大原則です。

ただし、管理監督者にはこの原則が適用されません。なぜなら、管理監督者は、労働管理において経営者と一体的立場にあるため、労働時間を規制することになじまないからです。


では、この管理監督者とは何なのでしょうか?


管理監督者を理解するうえでの重要なポイントは、使用者の裁量で登用できるいわゆる管理職と、労働時間規制の適用除外となる管理監督者の範囲は異なる、ということです。


言い方をかえると、管理者の範囲は使用者が任意に決めることができますが、管理監督者の範囲は使用者が任意に決めることはできず、法律で認められた範囲に限定されるのです。


そして、管理監督者の範囲については、


①労務管理について経営者と一体的な立場にある者であり、名称にとらわれず、実態に即して判断されること

②管理職手当や役職手当など賃金の待遇面で一般労働者に比べて優遇措置がとられていること


という基準を示で決められます。


「名称にとらわれず」という点が重要です。課長、部長の肩書きがあっても、実態として、責任や権限がない、地位にふさわしい基本給や手当てが支給されていないなどの事情を考慮して、当該事案においては管理監督者ではないと判断されることがあるのです。


これが、いわゆる、名ばかり管理職の問題です。


この点について、有名な日本マクドナルド事件では、裁判所は、


・外食産業の店長は、アルバイトを採用して一次人事考課には関与するものの、さらなる二次評価等には関与しないこと
・店長に独自のメニューを開発したり原材料の仕入先の選定権限はないこと、店舗の営業時間帯にマネージャーを置かなければならない関係上、労働時間の自由裁量がないこと
・処遇としてS評価の店長の場合は779万円余りの年収とはなるものの、店長の全体の40%にあたるB評価の店長の場合は、下位の職位者の年収との間に44万円の差がある一方、下位の職位者が平均的な時間外労働を行うと、下位の職位者の年収がB評価の店長のそれを上回ってしまう実態があること


などの事実を認定、評価して、この店長は労基法上の管理監督者にはあたらないと判断しました。


このように、管理監督者の範囲は厳格に判断されることになるため、残業代の不払いの問題になる可能性があります。残業代の不払いは、結局は企業にとって大きな支出になりますので、十分ご注意ください。


ご不明な点がありましたら、顧問弁護士にご相談ください。


また、労働者の方で、サービス残業、不払い未払いの残業代がある方は、一度弁護士に相談することをお勧めします。

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2010年1月25日月曜日

顧問弁護士(法律顧問)が扱うテーマ:電気用品安全法

顧問弁護士(法律顧問)が日々接するテーマをまとめています。

今回は、電気用品安全法についてです。


1 目的(法第1条)

 電気用品の製造、輸入、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止する。

2 制度の概要

(1)製品流通前の措置

① 品目指定(法第2条、政令第1条)

「電気用品」とは、電気事業法にいう一般電気工作物の部分となり、又はこれに接続して用いられる機械、器具又は材料のことです。

「特定電気用品」とは、構造又は使用方法その他の使用状況からみて特に危険又は障害の発生するおそれが多い電気用品のことです。

「特定電気用品以外の電気用品」 とは、上記「電気用品」であって「特定電気用品」以外の電気用品のことです。

② 事業届出(法第3条、政令第2、3、4条)

電気用品の製造又は輸入の事業を行う者は、電気用品の区分(施行規則 別表第一)に従い、事業開始の日から30日以内に、経済産業大臣に届け出なければなりません。

③ 基準適合義務(法第8条)、特定電気用品の適合性検査(法第9条)

届出事業者は、届出の型式の電気用品を製造し、又は輸入する場合においては、技術上の基準に適合するようにしなければなりません。また、これらの電気用品について(自主)検査を行い、検査記録を作成し、保存しなければなりません。

届出事業者は、製造又は輸入に係る電気用品が特定電気用品である場合には、その販売するときまでに登録検査機関の技術基準適合性検査を受け、適合性証明書の交付を受け、これを保存しなければなりません。

④ 表示(法第10条、12条)

届出事業者は、②及び③の義務を履行したときは、当該電気用品に省令で定める方式による表示(PSEマーク等)を付することができます。
上記以外の場合、何人も電気用品にこれらの表示又はこれと紛らわしい表示をしてはなりません。

⑤ 販売の制限(法第27条)

電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、④の表示(PSEマーク等)が付されているものでなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはなりません。

(2) 製品流通後の措置

① 報告の徴収(法第45条)

経済産業大臣は、法律の施行に必要な限度において、電気用品の製造、輸入、販売の各事業を行う者等に対し、その業務に関し報告をさせることができます。

② 立入検査等(法第46条)

経済産業大臣はこの法律の施行に必要な限度において、その職員に、電気用品の製造、輸入若しくは販売の事業を行うもの等の事務所、工場、事業場、店舗又は倉庫に立ち入り、電気用品、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができます。
このうち、販売事業を行うものに関するものは、事務所、事業場、店舗又は倉庫の所在地を管轄する都道府県知事が行います。(施行令第5条)

③ 改善命令(法第11条)

経済産業大臣は、届出事業者が基準適合義務等に違反していると認める場合には、届出事業者に対し、電気用品の製造、輸入又は検査の方法その他の業務の方法に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができます。

④ 表示の禁止(法第12条)

経済産業大臣は、基準不適合な電気用品を製造又は輸入した場合においては危険又は障害の発生を防止するために特に必要があると認めるとき、検査記録の作成・保存義務や特定電気用品製造・輸入に係る認定・承認検査機関の技術基準適合性検査の受検義務を履行しなかったとき等において、届出事業者に対し、1年以内の期間を定めて届出に係る型式の電気用品に表示を付することを禁止することができます。

⑤ 危険等防止命令(法第42条の5)

経済産業大臣は、届出事業者等による無表示品の販売、基準不適合品の製造、輸入、販売により危険又は障害が発生するおそれがあると認める場合において、当該危険又は障害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、届出事業者等に対して、販売した当該電気用品の回収を図ることその他当該電気用品による危険及び障害の拡大を防止するために必要な措置をとるべきことを命ずることができます。



ご不明な点は、顧問弁護士(法律顧問)にご相談ください。

また、法律問題でお悩みがある方も、気軽に弁護士にご相談ください。



なお、法律というのは絶えず改正が繰り返され、日々新たな裁判例・先例が積み重なっていきます。法の適用・運用のトレンドもその時々によって変わることがあります。そして、事例ごとに考慮しなければならないことが異なるため、一般論だけを押さえても、最善の問題解決に結びつかないことが多々あります(特にこのブログで紹介することの多い労務問題(残業代請求、サービス残業など)は、これらの傾向が顕著です)。そして、当ブログにおいて公開する情報は、対価を得ることなくメモ的な走り書きによりできあがっているため、(ある程度気をつけるようにしていますが)不完全な記述や誤植が含まれている可能性があり、また、書いた当時は最新の情報であっても現在では情報として古くなっている可能性もあります。実際にご自身で解決することが難しい法律問題に直面した場合には、一般的に得られる知識のみに基づいてご自身で判断してしまうのではなく、必ず専門家(顧問弁護士・法律顧問など)に個別にご相談いただくことを強くお勧めします。

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